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プレジデント×青年セフィロス

お互いがお互いを思ってはいるけれど恋ではない、そんな関係。

【ご注意ください】

・具体的な性的描写を含みます。

・玩具の使用あり。

 

年老いた夢

 

「あっく! うぅっ……!」

「はっ……セフィロス……」

 背後からゆっくりと弱いところを突き上げられ、青年は思わず息を詰めた。脳天まで突き抜けるような快楽が背筋を駆け上がる。シーツに四つ這いに這わされた肢体は、うっすらと上気して征服者の目を楽しませた。

「ああん! あうぅ……」

 男に抱かれることに慣れている体は貪欲に快楽を貪る。その心もまた、温かい体温に満たされ満足していた。

「はっ、セフィロス……!」

 体内の最も深いところを征服する肉棒が膨れて、やがて熱い飛沫を浴びせられるのを青年は感じた。だが、まだ達する事はできなかった。

「セフィロス、すまんな……」

「っく! はんっ!」

 ずるり、と萎えたものを抜き取られ、代わりに硬質な物体を挿入される。いわゆるバイブというものだった。

「このへんだな?」

「ん……ひっ!」

 そこそこの長さと太さを兼ね備えた玩具を根元まで挿入され、最奥に亀頭の部分が当たるように調整された。次の瞬間にはスイッチが入れられ、直腸内をかき混ぜられる。

「ああう! んああ……」

 男がこうして道具に頼りだしたのは、はたしていつごろだったか。それはごく最近のような気がするし、もう随分と前からだったような気もする。少年が青年になるのと同じだけの月日が、男にもまた流れていた。月日はゆっくりと、だが確実に男の精力を衰えさせた。

「んんん! ああん!」

 青年は、今まで感じていた満足感が急速に薄れ、代わりに切なさが襲い来るのを感じた。体は満足している。現にもうすぐイきそうだ。だが、手の中にあるものがゆっくりとこぼれていくような淋しさが去来したのだ。

「ああ! イく! イくう!」

 ビクビクと体を震わせながら絶頂を極める。男にその痴態を見せつける。艶(なまめ)かしい躰が踊る。

 男は年をとった。それは生きとし生ける全てが逃れられない、時の呪縛だった。少年だった自分を抱いたがっしりとした体躯は萎(しぼ)み、今では青年の方が逞しかった。それでも尚、男は青年を抱き続ける。お前は美しいと言う。青年はそれが嬉しかった。どうして嬉しいのかはさっぱり分からなかったけれど、嬉しかった。

 男は大きな夢を描き、それを実現してきた。人々が便利に暮らせるよう身を粉にして働き、数人で始めた組織を大企業に育て、巨大都市を築いた。科学技術を極め、人類の福音を求め、神の領域へと手を伸ばした。

 男の大きな夢は、やがて膿みだした。組織は四方八方から伸びる手に絡め取られ、一人歩きし始めた。豊かさの代償に、多くの矛盾と犠牲を生み出した。それでも、坂を転がり落ちるような時の流れを止める事はできなくて、矛盾を抱えつつも取り敢えずは日々が過ぎていって、ああ、このまま何事もなく自分は最後を迎えるんだろう、と男は思っている。ただ、なんとなく、漠然とだけれど。

「……プレジデント。風呂に入りたい」

「ああ、行こうか」

 あの日抱えた少年を見上げ、男は笑った。広い浴室が、二人で入るには少々手狭になった。青年は男の背中を流す。青年を包み込むようだったそれは小さくなった。代わりに、青年の背中は逞しく瑞々しかった。

「セフィロス、立派に育ったな」

「最近、同じことばかりおっしゃる」

「ワシももう年だ」

「まだまだ元気でいてくれないと」

 青年と男が湯船の中で向き合う。会話は狭い室内に反響した。まるであの時に還ったような気がした。

 

 青年はその後も、男に抱かれ続けた。大企業の方も、男を頂点として世界に君臨し続けた。長く続いた戦争も終結し、この都市の誰もが、明日の繁栄を信じて疑わなかった頃。

 多くの矛盾を抱えながら、相変わらずの日々が過ぎた。青年は大企業を守り、大企業は青年を守った。

 聞こえなかった。ひたひたと忍び寄る悪夢の足音なんて、この時には。

 

​Fin

20151125

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