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***


 ちゃぷん、と湯の立てる音が狭い空間に響く。
「泣き止んでくれて良かったよ、ちゃんと埋め合わせするからね」
 グラレアにある宰相の居室。倉庫で泣くレイヴスを宥めつつなんとか服を着せ、今日は将軍体調悪いみたいと言って強制的に連れ帰ってきた。この部屋にレイヴスを拉致することは珍しくないため、身の回りの小物はレイヴス用のものを一通り揃えてある。
 部屋に着くとアーデンはまず湯船に湯を張った。そしてレイヴスをすっぽんぽんにして湯に放り込み、自身も一緒に湯船に浸かった。髪や体を優しく洗ってやりながら、アーデンはレイヴスに言う。
「ちょっとさ、たまにはスパイスをと思ったわけ」
「……ふん」
「やっぱり俺としては、将軍様を押し倒してるってのも興奮する部分なわけ」
 この子からしたら理不尽かもしれないが、男として、強くて美しいものを支配することに興奮してしまうの仕方ないだろう。
「……軍の倉庫であんなことをするとはな。貴様、軍法会議にかけてやろうか?」
「あぁ~怖いよ~。……まあでもその時は、宰相権限で将軍の権限を全部停止するかなぁ」
「なんだと!?」
 自分にはそれを可能にするだけの権力がある。レイヴスはぎょっとした顔をしている。
「そんでさ、君から将軍位を剥奪して、幽閉しようかなぁ。足枷でもつけて、この部屋に閉じ込めちゃうよ?」
「ヒッ……!?」
 言いながら湯船の中で抱き込み、耳朶を舐ってやる。滑らかな素肌は湯に上気してほんのりと色付く。美しいこの男が自分のものなのだと思うとゾクゾクする。
「だからさ、そんな怖いことを言うなよ」
 ちゅっと頬にキスして、体を捩って逃げを打つのを解放してやる。レイヴスは湯船の縁に小さく縮こまって脚を抱えているが、この狭い空間で逃れらる範囲など知れている。いちいち面白い反応をしてくれる。
「そういえばさぁ、さっき、俺の計画とか言ってたけど、なに?」
 ふと思い出して訊く。
「……覚えていたのか」
「うん」
「……なんでもない」
 ふい、とレイヴスが視線を逸らした。
「ぷっ……あははッ! あのさぁ、俺多分、君の計画、知ってると思うよ」
「なぜ……! ……!?」
 レイヴスがはっとした顔をする。
「……分かった? 君の通信は全部俺のとこ経由してるから。……当然、ネットで買ったものもね」
 いよいよレイヴスの顔が真っ赤になった。
「でもまさか君があんなえっちな物を買うとは思わなくてさぁ」
 びっくりしちゃったよ。レイヴスはわなわな震えだす。
「貴様のせいだぞ! 貴様が忙しいなんて分かりやすい嘘をついて俺を抱かなくなったから飽きたのかと思ったんだ! 今まではどんなに忙しい時だって、無理やりにでも組み伏せてきたくせに!」
 叫んでからしまったと焦るこの子はやはりちょっと抜けている。アホだなぁ。
「レイヴス君はほんっとに可愛いねえ! 俺に飽きられたと思ってエッチな小道具で誘惑しようとしたんだぁ」
「黙れ、だまれっ!」
「あ~あ、健気だねぇ。君の王様としてはその健気さに報いてあげないといけないよねぇ」
 レイヴスは開き直ったようだ。
「残念だったな。貴様が突然連れてくるから、全て家に置いたままだ!」
 エッチな小道具は全て置いてきたからここで使うことはできないと、勝ち誇った顔をするこの子のプライドを今日も思い切りへし折ってやろう。
「いやぁ君がそんなもの買ってるなんて欲求不満かなって心配になってさぁ。俺も同じようなの買っといたんだよねぇ」
 クソエロオヤジ! と罵声を浴びせレイヴスが浴室から飛び出して行った。爆笑しながらそれを見送ると、アーデンも風呂を上がった。

 


 アーデンがバスローブを羽織って髪を拭きながら寝室に入ると、レイヴスは既に体をふき終わったのか乾いた素肌でベッドの上にちょこんと座っていた。いや、ガタイが良いので、ちょこんとというのはおかしいのだが、膝を抱いて枕を抱えているのだ。
「風邪ひいちゃうよ」
 アーデンがベッドにゆっくり近づくと、ぎくりと強張るのが分かる。
「……タオルは洗濯物のところに置いた」
「うん、ちゃんと拭いてえらいねぇ」
 子供扱いするな、と不貞腐れるのは緊張を隠すためだろう。
「……怖いの?」
「そういう訳では……」
 ギシ、とベッドを軋ませて隣に座るとさらに緊張したようだ。
「さっき言った、とっておきのもの取ってくるからここで待ってて?」
 淫靡な遊戯に誘うのに、わざと顔を覗き込み目を合わせて言う。
「だって怖くはないんでしょ? レイヴス君ってばここに来て怖気づくの? それは男としてどうかなぁ」
「な! そんなことは言っていない!」
 弱いとか臆病とか言われることが最も気に障るらしい。きっと自分の大切なものを守れなかったくせにと詰られるようで、コンプレックスを刺激されるのだろう。これを利用すれば上手くアーデンの思う方向に導けたりする。
「そう? じゃあ待っててね」
 背後にクソっと悪態をつく声を聴きながら、アーデンは隣の部屋に移動する。そしてやや小ぶりの紙袋を持ってくるや否や、中身をベッドに全て出した。
「……!」
 レイヴスは狼狽えている。
「君が欲しかったもの、全部入ってるでしょ?」
「……アーデン、俺が買わなかったものも含まれているようだが?」
「それは俺から君へのプレゼント♪」
 悔しそうに顔を真っ赤にしてからレイヴスは顔を玩具類から逸らす。そしてアーデンの方を向いた。
「そこに横になれ」
「お? なになに? レイヴス君がしてくれるの?」
 嬉々として彼に従う。珍しいこともあるものだ。
「……さっきはあんな場所で、しかも久々なのにおざなりにされたからな。今度は俺の好きにする」
「良いよ。君の言うことを聞くさ」
 何をしてくれるのか楽しみに思いながら、背後の枕にばふっと仰向けに倒れ込んだ。

***


 さて。レイヴスは考える。目の前には自分が選んだものよりも遥かに卑猥な道具類が並んでいる。自分が購入した類のものも含まれてはいるが、例えば色とか、形とか、イロイロな部分がグレードアップしている。主には自分が使われる側に回るそれらを見ると恐ろしいが、体は勝手に熱を上げる。これらを使ってするセックスはどんななのだろう。コクリと唾を飲み込む。
 まずはと、カラフルな色のパッケージを一つ口に咥えてみた。アーデンに見せつけるように目の前で開けてやると口笛を吹いてはやし立てられ腹が立つ。
「うわ! なんだこれは!」
「何ってゴムだよ。黒のイボ付き」
 自分が選んだのはちょっと色がついているだけのごく自然なものだったのに!
「なんだってこんな卑猥なものを!」
「いいじゃん、ほらさっさと着けて~?」
 開けてしまったものは仕方がない。アーデンの男根を見やればまだふにゃふにゃなので、口で咥えることにした。
「俺を前にして萎えさせているとはな」
「刺激してくんないと勃たないよ~」
「……ふん」
 アーデンの股間に這いつくばるようにして男根の先に口づける。ちゅうっと音を立てて吸ってみるとピクンと反応した。今度は亀頭部分を全部口の中に収めてもにゅもにゅと咀嚼するようにして刺激する。
「クッ……う……」
 小さな喘ぎに顔を上げると、アーデンの感じている表情が目に入りドキリとした。眇められた目、熱い吐息。
「んっ……、いいよ、その調子」
 大きな掌が頭を撫でてくる。口の中ではアーデンがむくむくと成長していて、カリ高の亀頭に上顎を擦られて股間にキた。
「ぷはっ……! アーデ、俺のもしてくれ……」
「良いよ。お尻こっちおいで?」
 レイヴスは赤の叢から顔を上げ、アーデンの顔の上に自らの股間がくるようにして逆さ向きに跨いだ。69の形だ。
「んぅっ……あ!」
「もう半勃ちじゃん、えっち~」
 揶揄われ羞恥が身を襲うが、それ以上に欲しくてたまらない。アーデンは目の前にぶら下がる、蜜を溜めてずっしりと垂れ下がる双球を口に含み、下の上で転がした。
「んっう! あぁ……ひ、あ……」
「ほらほら、君もおちんちんしゃぶるの続けて?」
「はぅ……んむっ……」
 ぴちゃ、くちゃ、と寝室内に二人が互いの股間を愛撫する濡れた音が響く。卑猥で、恥ずかしくて、気持ちがいい。
「んむぅ! ――――っ!」
 ぎゅうっと双球を口内で押しつぶすようにされてレイヴスの腰が跳ねた。じわぁっと、ペニスの先が濡れたのが分かる。
 もっと直接的な愛撫が欲しい。ペニスを舐めてほしい。思わず腰を振っておねだりしてしまった。
「こぉら、じっとしててよ。今あげるからさ」
 ぴちゃ、とペニスに濡れた感触。ペニスが口内に招き入れられ、熱く濡れた粘膜がぬるぬると愛撫する。ちゅうっと思い切り吸われて内腿が引きつる。
「んむっ……ぐ……んちゅ……」
 アーデンの性器はそろそろ準備ができたと言える。自分も後ろの準備をしなければ……。
「あーでっ……、尻を離してくれ、後ろ、解すから……」
「自分でできるの?」
 自分で後ろを解したことなんてないから分からない。躊躇がアーデンに伝わったようだった。
「玩具で解すといいよ」
「なっ……いやだ……」
「なんで? せっかく準備したのに」
「……怖い」
 本音が漏れてしまった。アーデンの目がぎらぎらしている。自分に興奮しているのが分かる。
「そんな可愛いこと言って……。いい? そんなの男を煽るだけだから。で、君は俺を煽ったんだから責任をとりなさい」
 怖い。でもアーデンと恥ずかしいくらい気持ちがいいセックスがしたい。
「細めのバイブと中くらいのバイブ、あとジェルボール選んでこっち持っておいで」
「ジェルボール……?」
「その青い箱、中の丸いの一つ」
 アーデンに命じられ、のろのろと身を起こす。抵抗や反抗しようとはもう思わない。とにかく早く可愛がって欲しい。ただ、どうしても怖いけれど……。
 大きなベッドの足の側に散らばる道具類を見て、恥ずかしくて泣きそうになってしまう。自分が責められるための玩具を自分で選んで、責める側の人間に手渡さないといけない。
「……アーデン、その……ふ、普通の形状のは」
「普通? 何が?」
「何って、その……」
「はっきり言ってくれないと、何のことか分からないよ」
 ぎらぎらと雄の欲望を宿した目と視線がかち合う。わざとだ。この男は俺にそれを言わせたいだけだ。
「……バイブ。イボつきなんて嫌だ」
 アーデンの笑みがいやらしくてセクシーで腹が立つ。
「イボないのあるでしょ?」
「これは形が変だ」
「おちんちんも同時に責めてくれるよ?」
「……前は咥えてほしい……」
 あくまでもアーデンとセックスがしたいのに。
「いい子だね。さあ、早くそれ持っておいで……」
 素直に口にできたことを褒められた。とろけるような口調と甘い視線に誘われ、レイヴスはのろのろと視線を戻す。細身のものと、中くらいのもの。言われた通りの玩具を掴む。イボが付いてグロテスクだがこれ以外はもっと太かったりえげつない形状をしているので選択肢が無い。ジェルボールも一つ取り出しアーデンに渡した。
「こっちにお尻向けてわんわんになってごらん?」
 わざと幼児語で指示される。レイヴスは真っ白でまんまるな尻たぶをアーデンに突き出すようにして四つ這いになった。
「頭は下げる」
 言われる通り、服従のポーズを取る。
「……今日はそういう気分なのか?」
 ん~? と間延びした返事があったかと思った途端、ジェルを纏った指が後孔に潜り込んできた。
「ア”ァァァ!」
「焦らされてたから刺激が強いかな?」
 ぬちゅん、ぐちゅんと濡れた音を数回立てると、指はあっさり抜けていった。
「んッ……は……」
「欲しいんでしょ? おめめに涙溜まって、お顔も真っ赤だったもんねぇ」
「質問に、答えろ……」
 アーデンがくすっと笑った。
「そう、そういう気分。レイヴス君を気持ちいいよう死んじゃうようってあんあん泣かせる気分」
 恥ずかしい、恥ずかしくてたまらない。それなのに体はきゅんと疼く。じっくり可愛がって貰えると思うと幸せを感じてしまう。
 首だけ背後を振り返りアーデンの方を向く。目尻から涙が一筋零れた。
「あ、でん……ちゃんと言うこと聞くから……、いっぱい、可愛がってくれ」
「……いいよ」
 今夜はどうなってしまうんだろうか。
「レイヴス……じゃあ先ずはオイル挿れようね~」
 背後でパッケージを破る音がしてから、アナルに何かを押し当てられた。
「お腹の中で溶けて濡らしてくれるからね」
 ふにふにと指で蕾を押されて開くよう促される。軽くいきんでアナルを開くと、固形物を体内に入れられる感触が襲う。
「うぅ……、あ、苦し……きもちわるい……」
「座薬なんかよりよっぽど大きいもんね。我慢我慢」
「んうぅぅ~~!」
 くぷん! と蕾はボールを呑み込んだ。アーデンの指は、指の股が尻たぶにつく深さまでそれを押しこんでから出て行った。
「く……はっ……」
 腹の中に異物を受け容れて、腸がきゅうっとうねった。その時、前立腺を押されて甘い吐息が漏れた。
「さて、じゃあそれが解けるまで、マッサージしてあげようね」
 アーデンの腕で仰向けに寝かされると、脚を開かされてその間にアーデンが座った。アーデンはジェルを手に出して、そっとレイヴスの胸に伸ばす。
「あん……あ……あ!」
 両の乳首を優しくつねられて腰が跳ねた。オイルボールをきゅうっと締め付けてしまう。
「おちんちんは後でね。まずはこっち」
「ひっあ! ふぁぁぁぁ!」
 にちゅ、ぬちゅ、と卑猥に乳首を捏ねられる。腰がくねってアーデンの体にペニスを擦りつけるようになってしまった。
「まだイったらダメだよ。そろそろ溶けてきたかな?」
 再び後孔に指を入れられ、中を掻き混ぜられた。溶けたオイルがぐちゅんと濡れた音を立てて羞恥を煽る。
「良い感じ。じゃ、まずは細いの挿れてあげる」
 目の前にイボだらけの細身のバイブを翳された。
「舐めなさい」
 唇を割って卑猥な玩具が入って来る。懸命に舌を絡ませるとイボイボに刺激されて鳥肌が立った。
「んぶっ……んぐ……」
 これからこれがお前の中に入るよ、どんな形かよく覚えておきなさい。まるでそう言われているようで、支配される快楽がレイヴスを包む。
 丁寧に舌を絡めて見せているとアーデンは満足したようだ。玩具が口の中から抜かれ、レイヴスは足を自分で抱えているよう命令される。そしてそれに従うと、バイブが蕾に当てられて、2、3回入口を刺激されてからゆっくりと埋め込まれる。
「ひ……っああぁぁ! ~~~~!?」
「どう? イボイボに擦られるの初めてでしょ。気持ちいい?」
 直腸を擦り上げられ、ごりっ! ごりっ! と性感帯を潰される。未知の感触に背筋が反り返ってしまう。気持ちよすぎておかしくなりそうだ。
「あぁ! むり! むりぃ!」
「何言ってんの、まだ最初じゃない。この後これスイッチ入れたらお腹の中で暴れるんだよ? それが済んだらもっと太いの、そのあとは俺のペニス。今日は精液空っぽになっちゃうね?」
「やだ! やだぁ! 空っぽやだぁ!」
 出すものがないのに責め抜かれるのは快楽を通り越して苦しい。時折味わわされる過ぎる快楽を思い出して抵抗するも、ぐずぐずに蕩けた体では敵う訳がなかった。アーデンに大人しくしていなさいと言いつけられる。そして逞しい体に上から覆い被さられ、腕にがっちり体を抑え込まれたと思ったとたん、後ろに咥え込まされた玩具を弄られる。次の瞬間、今まで味わったことのない強烈な刺激が腹の中を襲った。

「ひぃああああーーーーー!!!」
 初めてバイブを挿入されたレイヴスはもう半狂乱だ。イボだらけのそれが直腸内でモーター音を立てながら震えている。
「やめろッ……! ぅあっ……ひいぃ……」
「気持ちいいでしょ?」
 前立腺を擦り上げるようにバイブの柄を握って動かしてやる。目を見開いて涙を零す様子から、気持ちいいけれど初めての感覚で怖いのだと分かる。
「こら、押し出しちゃだめだよ」
 イキんでバイブを押し出そうとしたことを見咎め、ぐいっと再び根元まで呑み込ませる。
「んぁぁぁ……やあああ……」
 だんだんと快楽に馴れてきたのだろう、表情が蕩けだし、口元からは涎をこぼしている。
 もうそろそろ次のステップに進めるだろうか。アーデンはバイブを抜き差ししてナカの具合を確かめた後、スイッチを切ってそれを抜いた。
「……レイヴス、次はこれだよ?」
 先程までよりも一回り大きなものを手に取って、レイヴスの頬に擦り付ける。いやいやと頭かぶりを振るのを聞き入れず、先っぽを蕾に押し当てる。
「っあ!」
「さっきよりは太いからねぇ、ちゃんと口開けて」
 ぐちゅん、とはしたない下の口が卑猥なそれを呑み込む。ひくんひくんと震える蕾はおねだりしているみたいだった。
 やがてそれも奥まで挿入すると、また玩具のスイッチを入れてやる。
「ひあぁぁーーーー!!! もおやだ! やだぁ! っっっあああああ!」
「何が嫌なの? きもちいいでしょ?」
「きもちいッ……! きもちいよぉ!! や、も、おかしくなるぅ……っあ!」
 ぴゅるっと勢いよくレイヴスのペニスから白濁が迸った。
「あ、1人でイっちゃったの? 悪い子だねぇ」
「ちが……っ、だって、それのせい……っ、ぁぁあん……」
「大きく俺に向かってお股開いて、おしりの孔におもちゃ咥えて射精しちゃって、レイヴスくんはエッチだねぇ」
「ひどい、ひどいぃ! 貴様のせいだぁ……ッッ!」
 そうだね、俺のせいだ。俺が君をここまで躾けたんだから。そう言ってあやしながら見事な腹筋がついた下腹部をゆっくり撫でてやる。白い肢体がびくびくと震えた。そろそろ俺を呑み込めるだろう。
「レイヴス、もう俺のあげよっか? 欲しいでしょ?」
 濡れた目が欲しいと訴えてくる。綺麗なお顔が涙と涎でべちゃべちゃなのも可愛いなぁ。
 アーデンはレイヴスを促してベッドの上に身を起こした。レイヴスの腕を掴んで彼も座った状態にする。そこからはレイヴス自らアーデンの股座に顔を埋めてきた。何を求められているのか分かっているのだ。
「ん、んぶ……ふっ……ちゅうっ……」
 獣の姿勢で俺の股間に顔を埋めて、バイブを咥えた尻を振っている。
「君はほんとうに可愛いしはしたないねぇ……ッ」
「んぶっ……んっ……ッ!」
 レイヴスに舌を使われて強く吸われ、ぞくぞくと覚えのある感覚が腰から背を伝う。そろそろだ。アーデンは夢中でフェラチオをしている前髪を掴んで顔を上げさせると、自らの欲望を、そのぐちゃぐちゃになって普段の神経質さや高貴さは鳴りを潜めている顔にぶちまけた。
「あ……っ、きさま、何を……」
「何って顔射。将軍様のお顔汚しちゃった。……あー、いいね。すごく背徳的だ」
 レイヴスは不満そうにしている。折角顔に掛けてあげたのに何が気に入らなかったのだろうか。あ、もしかして飲みたかったのだろうかと思って訊いてみると、素直にこくんと頷いた。
「ああそうだったのか、ごめんねぇ。じゃあ下のお口でごっくんしようか?」
 汚れた顔をティッシュで拭ってやる。身を起こしている彼の尻に腕を回し、咥えている玩具を抜いた。
「うあ……ッ」
 バイブの震えながらうねうねとうねっている動きをそのままに、アナルから引き摺りだしてスイッチを切る。レイヴスは、先程開けてしまっていたイボ付きコンドームをアーデンの、射精しても硬度を失っていないそれに被せる。
「……おいで」
 腰を支えてやりながら促すと意を決したように唇をか噛み締めてから、ゆっくりと腰を落とし始めた。
「んっ……あ、アーデ、太い…ッ」
 はあはあと忙しなく浅い息をつきながら、レイヴスがグロテスクな性器を尻に収めていく。やがて尻たぶがアーデンの太腿につくと、ほっとしたかのように力を抜いてアーデンにもたれ掛かってきた。
「はい、お疲れ様」
 対面座位で抱きしめてやりながらゆっくりと腰を使えば、甘えるように鼻を鳴らす声が耳元を擽る。この子が自分に抱かれるのが好きなことくらい分かっている。そして自分もこの子を抱くのが好きだ。
「甘えんぼさんしてるの?」
「……ずっとほっとかれて、寂しかったんだぞ……」
 顔がにやけてしまうのを止められない。そんな全力で恋してる顔で甘えられて、我慢できるはずがない。
「ちょっと激しく突くからしっかり掴まっててよ」
 そう宣言して、レイヴスを大きなストロークで穿ち始めた。


 もう嫌だと本気で泣いても止めなかったし、もう出ないと怒ってうなじを噛んできてもイかせ続けた。レイヴスはもう出すものがなくてふにゃんと萎えたままのペニスを揺らしてひたすら空イキを繰り返した。
「んっ……は……あ、またくる……も、いやだ、くる、くる……っひぃあぁぁぁ!」
「また女の子みたいにイっちゃった? いっぱいイけてきもちいねぇ?」
 結合を解いてからは、再びレイヴスの後孔にバイブを挿入して、レイヴスを寝かせ自分も横になり、向かい合う形に抱き込んで可愛がった。腕の中でしっかり抱きしめ、背中を優しく撫で、体内で振動するバイブにつられてわずかに震える白い尻たぶは両手で掴んで揉んでやった。その度にアナルリングが形を変え、敏感な蕾に刺激を拾わせる。バイブもぐもぐしてるなんて恥ずかしいお尻の孔だねって揶揄ってやったら、泣きながら透明な粘液を性器から垂らした。
 そして、暫くして。
「あ! アーデン!! ダメだ、離せッ、はな……ッーーーーー!?!?!?」
 もう勃起しないペニスをそれでも攻め続けていたら、ついにレイヴスは潮を噴いた。嫌がる体を押さえつけながら亀頭を擦り続けてやっとこれをさせられた。
「潮噴かせるの憧れだったんだよねぇ。あ、心配しなくてもこれおしっこじゃないからね?」
 レイヴスを見ると、気絶したようでぐったりと目を閉じてしまっていた。

 

 レイヴスが目を覚ましてから、再び湯を張ってアーデンはレイヴスと共に風呂に入った。
「俺が君に飽きる日なんて来るわけないでしょ? 君は特別なんだから」
 熱めに設定した湯加減。湯煙の中で声が響く。
「俺は君以外に抱く気もなければ、こういう時間過ごすつもりもないからさ」
「……特別か」
 レイヴスは大人しくアーデンの脚の間に収まっている。
「嬉しいでしょ?」
「……いらん」
 また意地を張っている。本当に素直じゃないなぁ。
「じゃあ他のとこ行ってもいいの?」
 少しの沈黙の後、ダメだ、と言いながらレイヴスが二の腕にしっかりと抱きついてきた。
 自分が強引に絡めとってこういう関係になっているが、レイヴスだってまんざらでもないようで安心してアーデンに甘えてくる。それならばお互い同じだろう。
「……ねえ、玩具も楽しかったね? 次はどんなのしよっか」
「もう嫌だ……。こりごりだ……」
 掠れた声で弱弱しく訴えるのを見て、これだからこの子を可愛がるのをやめられないと思った。


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