流れる銀糸の秘密
ほぼ一発書きの落書きSS。AC後のつもり。クラセフィちゃんはいちゃいちゃラブラブしてるし、セフィは記憶を保ったままなのでご都合主義です。宝セフィ親子ネタもあり。
一日の終わり。クラウドはセフィロスと共に入浴し、彼が長い髪を洗うのを見ながら、ふと浮かんだ疑問を口にした。
「なぁ、あんたってなんで髪伸ばしてるんだ?」
ん? とセフィロスが、目を閉じてシャンプーを泡立てる手を止めないまま答えた。
「子供の頃、お前の髪は母親にそっくりだと言われて」
あ、これ、あんまり訊かない方が良かったやつかも、とクラウドは内心ひやりとした。しかしセフィロスの方は気にする様子もないまま続ける。
「あとはガスト博士が、珍しい見事な銀色だと褒めてくれたから」
おいおい、全くもってダメなやつじゃんこれ……クラウドは自身の何気ない好奇心を後悔した。
「その……、ごめん。あんたを傷つけたかったわけじゃないんだ」
クラウドの言葉に、セフィロスは一瞬手を止め、それから無言でわしわしと髪を洗い終えるとシャワーで洗い流し、器用に後ろに流してからシャワーを止めた。
「違う、クラウド」
セフィロスは湯船に浸かるクラウドと目を合わせた。魔晄色の瞳は、瞳孔がネコ科の動物、或いは爬虫類のように縦になっている。
「俺は、なぜ髪を伸ばしたのかを答えたんだ。今も切らない理由はまだ言っていない」
どういうことだろうか。セフィロスはふふ、と柔らかく笑う。
「クラウドが、この髪をいつも優しく梳いてくれるから。それに気に入っているようだから、このままだ」
それを聞いたクラウドの方が真っ赤になってしまう。
「もう……! ほら、後ろ向いて」
嬉しそうに笑うセフィロスはトリートメントのボトルをクラウドに渡して、浴槽に背を向けて椅子に座る。
綺麗な銀色の髪。クラウドはトリートメントをたっぷりと手に取ると、丁寧にその髪に伸ばしていった。
クラウドと共に寝台に入って、セフィロスはふと考える。
母に似ている、という髪は、その実どちらの母のことだったのだろうか。
あれを言ったのは宝条だった。当時はただ母「ジェノバ」のことだろうと思っていたが、今から思えば生母であるルクレツィアのことも指しているのだろう。髪型が生母で、銀色がジェノバ。
そういえば、宝条はセフィロスが髪を伸ばし始めたころから、なぜか洗髪料の開発を始めたのだ。色々な香りのものを準備しては押しつけてきた。高級品だと言うから嫌がらせの意味を込めて一回につき一本使ってやったりもしたが、いつも切らさずに届けられた。
あれは何の実験だったのだろうか。てっきり宝条が頭髪を気にしているのだとばかり思っていたが、あれを使っても髪の量が増えたりはしなかった。失敗作だったのだろうか。
思えば、あれを使ってからやたら髪の艶が増して褒められるようになった。ならば女性向けの神羅の商品だったのか。
星の記憶を辿っても、宝条の真意は分からない。
そのうちに睡魔に襲われ、セフィロスはクラウドにピタリとくっついて目を閉じた。