top of page

最初の夜の攻防戦

ふわっとですが現パロ設定。
おじは会社の役員まで行ってる企画系の人、兄は法務部あたりの部長かな。
レイアデというかレイヴスくんが男前だけどアデレイです!と言い張る。
でもアーデンがネコもいける設定とか、レイアデの描写も入るので、絶対アデレイじゃないとダメ!という方はご注意が必要かもしれません。
書いた側はアデレイのつもりで書いてます。男前な受け。

「嫌だ」
 レイヴスとそういう仲になって早数ヶ月。そろそろ組み敷かせて頂こうかと仰向けに押し倒した途端、彼はこう言い放った。
「え……?」
「だから。組み敷かれる趣味はないと言っている。……退け」
「そんな! ちょ、ちょっと!」
 これには参ってしまった。だってアーデンはもうその気になってしまっているのだ。年甲斐も無く既にアソコがスタンバイしかけているというのに…!
 って言うかなんでだろう、俺ムード作り間違えちゃった? 今の今までいちゃついてたのに……え、何俺の勘違い!? そんな訳は無いだろう、だって息子が兆したのだってレイヴスの体温に長いこと触れていたからなのに。
 内心焦っているアーデンを余所に、レイヴスはごそごそと覆い被さっている男の胸元から這い出そうとしている。
「こらこら待ちなさい! レイヴスく~ん困るよ~コレ……わかるでしょ?」
 跨ぐようにしているレイヴスの太ももに芯が通り始めたソレをぐりぐり押しつける。レイヴスは息を呑みつつ、半ば睨むかのような視線を投げかけてきた。
「……いいや、俺には分からない」
 一見怒っているようだがこれは違う。彼は動揺しているのだ。
 レイヴスは、内心で焦ったり困ったりした時によくこうなる。わざとらしいまでに殊更ゆっくりと話すし、射貫くような真っ直ぐな視線を投げかけてくる。最も、最愛のルナフレーナ様の前ではもうちょっと素直な反応をするのかもしれないけど。
「分からないってどういうこと?」
 ついにレイヴスが腕の中から這い出し、アーデンの上体を押しのけてソファから立ち上がった。このまま服を脱がしてベッドまで連れて行く計画は敢え無く消え去ったわけだ。
「別に俺は肉体関係を持ちたいとは思わない」
 なんということだ――――!!! あまりの衝撃にアーデンは自分が石になってしまったのでは無いかと思った。そんな、こんなにもレイヴスくんを愛しているのに、抱くことができないなんて……!
「レイヴスくん……、そ、その、……俺の事嫌い?」
 いいや? とすぐさま否定が返ってきてほっとした。いや、ほっとしている場合では無いのだ、嫌いでない事は知っている訳で、問題は何で肉体関係は嫌なのかというところで……。
「じゃあ、俺の事好き?」
 これには少しの間があってから、ああ、と返ってきた。間があったのは照れていたからだ。唇を尖らせて拗ねたような口調になったから。
「でも、俺と、エッチするのは嫌?」
「お前とだから、ではない。俺はそういうものを求めていないんだ」
 成る程。つまりレイヴスくんはプラトニックラブを求めているだな? ていうかこの言葉選んだのちょっとおじさん臭いなと自分でも思うんだけど、実際おじさんだから仕方ないよね。
「そっか……」
 アーデンはソファに深く座り直した。深い煉瓦色の布張りのソファが音も立てずに深く沈む。
 傍らに佇むレイヴスにそっと手を伸ばして促せば、彼は少し警戒した様子を見せつつも、アーデンの隣に浅く腰掛けた。
「不埒な真似はしないって誓うからさ、リラックスしてくれないかな?」
 しばしじっとこちらを見つめた後、ため息と共に体の力を抜いたのが分かった。アーデンと同じように深くソファに埋もれるレイヴスが、口を開いた。
「それとも……、お前はどうしても体が欲しいか? 安寧と愛情だけでは、共に眠るだけでは不満か……?」
 少し不安そうな声。ああ、レイヴスも自分と共に居たいと思ってくれて居るらしい。安堵した。
「うーん、そりゃあ俺は君のこと抱きたいし、そういう事したいなって思うけど。でもねぇ、無理強いするものじゃないでしょ」
 再び暫しの間が空く。レイヴスは何かじっと考えているようだ。少しうつむき加減で唇をきゅっと閉じて思案している。
 あんまり考え込んでいるものだから何だか可哀想になってきて、「良いんだよ、ゆっくり考えようよ、俺は急がないよ」と言葉が喉まで出かかった時だった。
「……或いは、俺がお前を抱くのであればできるかもしれない」
「……え……?」
 今なんて言った? 俺がお前を? つまりレイヴスくんが俺を? 抱く?
 頭が意味を理解した途端、アーデンは驚くと同時にしまったと焦った。
「い、いやいや、ほんと、ゆっくり考えてくれれば良いから! 絶対今すぐ抱かせてくれとかそういう事を言うつもりは毛頭無いよ!」
 さっき押し倒した分際で説得力が無いと言われようが、構っている場合ではない。確かに自分はオープンというか、女性も男性もいけるし、なんならネコ役に回った事もある。だがそれも昔の話だ。まだ若かった当時、年上の男性と寝た時に下になって欲しいと頼まれたので気軽に応じた、ただその程度だ。ネコ役も相応に気持ちよかったのだが、あの快楽を、今、レイヴスから与えられたいとは思わない。むしろ自分が与えてやりたい訳で、自分はレイヴスを組み敷いて未知の快楽に喘がせ、甘く啼かせたいのだ。
 ふと座っている所が深く沈んで現実に引き戻される。レイヴスがアーデンの太ももの横に手をついてこちらを見ている。
「……いや、ちょっとそれも良いかもしれない、というか、お前相手ならいけるかもしれない」
 レイヴスがアーデンの方ににじり寄ってきた。ダメだ、目が完全に男になっている。これは本気で自分がタチに回るつもりだ。
 だがまぁ、触れ合う事自体を拒んでいたさっきと比べたら、いくらか自分に有利な気もする。アーデンは必死に戦略を巡らせる。途中まで流されてやって、いざという時になって上下入れ替えてしまう手もある。よっぽど嫌がられたら解放してやるが、もしかしたら勢いで押せるかもしれない。
 なかなかに下司な事を考えているうち、レイヴスの顔が近づいてきた。目を閉じ、どちらからともなく唇を重ねる。最初は触れ合わせるだけだったものが、徐々に熱を帯びてくる。
(ちょ……、意外と積極的じゃん……、っていうか既に主導権争いになってないかこれ……?)
 レイヴスの口の中に舌を押し込みながら、彼の頭と首を支えてやろうとするのだが応じてこない。むしろレイヴスの方はアーデンを押し倒そうとしているようだ。
「む……っぷあ!! ちょ、こらこら待ちなさい! こら! 落ち着いて!」
 レイヴスも大柄な部類に入るが、幸いにもアーデンは更に大柄で逞しい。なんとか押し倒されないように踏みとどまる。ぐぎぎ、と腰を反り返らせるような体勢になっていてちょっと辛い。このままでは若いレイヴスに力負けしないとも限らないので、アーデンは頭脳戦に出た。
「分かった分かった! じゃあ、じゃんけんで決めよう」
「は?」
 案の定、訝しげな声。
「だから、じゃんけん。じゃんけんして、負けた方が抱かれる」
「そんな賭け事で決められる筋合いはない」
 提案は一蹴された。だがここまでは計画通りだ。
「じゃあどうやって決めるの?」
 言葉を返せないレイヴスがぐっと押し黙った。いいぞ、その調子だ。会話の主導権はアーデンが握っている状況で、既に相手をこちらのペースに巻き込みつつある。別に今決めなくたって、当分はセックスしないとすれば良いだけの話だが、レイヴスは訊かれた事に丁寧に返そうとする節があるからそこを突いた。大人げないって言われても構わないよ、こっちも必死だからね!
「どっちもタチやりたいんだから埒が明かないじゃない。それに、今決めたって次は逆でも良いんだよ? ……ああ、そう考えたら、やっぱり今夜は俺が君を抱くよ」
「なんだと?」
「だって君……男の抱き方分かるの?」
「――――ッ!」
 よし、決まった! レイヴスは唇を噛みながら恨めしそうにこちらを見ている。もう一押しだ。
「今日はそのやり方を教えてあげるよ。あれもなかなか奥深くてね、下手にするとネコは大怪我するから」
 その言葉にレイヴスは体を硬直させた。おっとこれでは嫌がられてしまう。
「大丈夫、俺そこそこできるから、ちゃんと悦くしてあげる。怪我なんて絶対させないからね」
 だがレイヴスの眉間の皺は消えず、更に胡乱げな視線を寄越してきた。ん? どしたの? などと首を傾げて見せてやる。我ながらいい根性をしていると思う。
「……お前はなかなかに尻軽なのだな」
 レイヴスはぷい、と向こうを向いて立ち上がると、スタスタ歩いてリビングを出て行ってしまった。
 え? 今なんて言った? 尻軽って、それはどちらかと言うとネコ側に言う言葉じゃない? ってかちょっとあいつどこ行った訳!? トイレ? 今? 風呂? あら結構やる気? じゃなくてほら靴履く音が聞こえてくるじゃん帰る気だよ!
「あーー!! 待ってよ違う、昔の話だよ、む、か、し、の!!」
 慌てて廊下飛び出してレイヴスの手を引っ張った。彼は靴を履くために屈んでいたので思い切りバランスを崩し、アーデン共々尻餅をついた。
「おい……っ! 貴様! 何をするんだ!」
 だからナニをするんですよ、ってうわあ、また俺おじさんみたいな事考えちゃったよ嫌だ嫌だ!
「違うんだって誤解だよ! 若い時の話! 今は、というかもうこれからはずっと君一筋だよ分かってるでしょ!?」
「浮気性な男ほどそういう事を言う」
 なんか可愛いなその言葉。女の子怒らせちゃったみたいでさ。
「ごめんって。機嫌直してよ、こっち来て」
 ぐいぐいと腕を引っ張って連れ戻そうとする。もう抱く抱かれるはこの際良いから、今夜は一緒のベッドでゆっくり眠ろうよ。
 だがレイヴスは、いや、と落ち着いた口調で言うとアーデンから自らの腕を取り戻した。
「今夜はもう帰る」
 その言葉には鳩尾が冷える思いがした。
「……ごめん、やっぱり怒ってる?」
 もしかしてちょっとこれは修羅場では……。
 だが、アーデンの心配は杞憂に終わったらしい。
「そうではないんだ。そうではなく……、きちんと決めて、覚悟を決めてから挑みたい……流されるのではなくて」
 俺にとってはとても重要な事だから、と続けられた言葉。真摯な声と、穏やかなまなざし。
 そうだ、こんな所だ。真面目で不器用で、とても誠実な彼のこんな性格に自分は惹かれているのだ。間違いなく、彼自身の人柄に惹かれている、そういう意味では、体を繋がなくても、別に良いのかもしれない。少し自分が欲張りなだけで。
「了解。分かったよ」
 アーデンも穏やかな声で返した。レイヴスは一言、助かる、とだけ言うと、再び腰を落として靴を履いた。
「アーデン」
 靴紐をしっかりと結んだレイヴスは腰を上げると、アーデンを真っ直ぐに見つめてきて、そして言った。
「ちゃんと、お前が好きだから。……お前以外と、こういう事をするつもりは無いんだ」
 急にレイヴスが顔を寄せて来たと思った直後、唇にふにゅっとした感触がした。ふんわりと唇全体が包み込まれ、労るように柔らかく食まれてから、それはすっと離れていった。
 目をぱちくりとさせまだ動けないアーデンが何か言う前に、レイヴスは扉に手をかける。そして、おやすみ、という言葉を残し、彼は静かに出て行った。
 もう夜も遅いからだろう、彼はドアをそっと閉めていったので、バタンという音はしなかった。彼がいなくなった玄関は急に広々として見えて、さっきまでの出来事は全て夢だったんじゃないかと思うほどに静かだった。
 レイヴスにキスをされた。お前だけだと暗に告げられて。そして彼は颯爽と出て行ってしまった。
「ちょっと……、それは格好良すぎるんじゃない? ズルいよ……」
 アーデンはその場にへなへなと座り込む。
 レイヴスは格好いいんだけど、綺麗だし、俺にとっては可愛いし、庇護欲を掻き立てる存在な訳で。年齢差を考えても、当たり前のように主導権は自分が握り、彼を組み敷きリードしようと思ってるんだけど……。
 先程自分がやろうとしたキス、できなかったのに彼にはされてしまった。彼の手の平はアーデンの後頭部に回り、首をしっかり支えられていた。
 初心だし経験も無いし、こっちが押されるとは思いもしなかったのに。
(ひょっとしてレイヴス君って相当に手強いんじゃ……)
 口付けられた唇が、熱を持ちじんじんと腫れているように思えた。




 

この後は、
1、アーデンを抱く覚悟を固めてきたレイヴスくんだったが、あれよあれよとおじに転がされ抱かれてしまい、その後もなんだかんだ理由をつけては抱かれるうち、ネコとして開花してしまう(安定の可哀想可愛い)
2、スパダリ兄自ら、お前になら許してやるから、一生責任取れって抱かれに来てくれる(結婚)

 

などの設定があったり無かったり

Fin

​20170426

bottom of page