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バスルーム

 軍務を終えグラレアに帰投したばかりの将軍を捕まえて、アーデンが自室に青年を連れ込んでから既に一時間程が経過した。
『今日もお手柄だったらしいじゃない』
 そう褒めたアーデンの、声は甘く優しいが目が全く笑っていなかった事にさすがのレイヴスも気付いたのだろう。彼は黙ってアーデンに付き従ってここまで来て、言われるがままに服を脱いでアーデンの寝台に上がった。

「やめろ、まだ……ッ、アァァ!」
 馴らすのもそこそこに、うつ伏せに押さえつけて一息に背後から貫いてやる。上体は寝台に這わせて腰だけを高く上げさせる屈辱的な体勢は彼が嫌がるものだが容赦するつもりはない。
「――ッ、キツいなぁ、ちょっと緩めろよ」
 パシンと乾いた音を立てて彼の引き締まって筋肉質な尻を叩く。びくんと背をしならせ、レイヴスが深い呼吸をして必死に肉棒を受け入れようとしているのが分かる。
「グゥッ……う……」
「もうちょっと色気のある声が聞きたいんだけど」
「誰のせいだ!」
「俺だねぇ」
 強引に体を割り開くと言ってもさすがに出血させるような真似はしない。ジェルをたっぷり含んだ後孔は強引に押し入ってきたものが主人であると理解した瞬間、とろけてはくはくと口を開き始める。レイヴスが一糸纏わぬ姿であるのと対照的に、アーデンは局部を寛げただけだ。ほんの数時間前まで帝国軍の最高司令官だった彼は、アーデンの前では簡単に性奴隷へと堕とされる。
「ひぁ……ア……、あぅ」
「その調子だよ」
 腰を振るたびに、ぐちっ、ぬちっと結合部が粘着質な音を立てる。今彼がどんな顔をしているのか見たくて、アーデンは体を繋いだままでレイヴスを仰向けに返した。カリの張り出したところが前立腺をえぐったらしく、卑猥な悲鳴を上げながらレイヴスが劣情を噴き上げた。
「うぅ……クッ……」
 眉根を寄せ歯を食いしばり、最後の一滴まで吐き出そうと腹筋が波打つ。その動きのせいでアーデンを咥える内部も収縮してしまい、自分で自分の弱い場所を刺激することになり更に追い込まれている。哀れで可愛らしいことだ。
「許してないのに先に出しちゃって。堪え性が無いんだから」
「や、めろ……! すぐは……ッ、うあぁぁぁ!」
 イったばかりの敏感な体を責められるのはさぞかし辛いだろう。しかしこれは主の言いつけを守れなかった奴隷に対する仕置きだ。容赦などするはずもなく、猛った強直で蕩けた内部をぐちゃぐちゃにかき回す。レイヴスはもう泣き叫んでいる。ゴリッ、ゴリッと音がする程に強烈にしこりをすり潰してやると、唾液で汚れた唇がわななく。泣き濡れた瞳が、もう許して欲しいと訴えている。
「今夜はそう簡単には許さないからね。覚悟しなよ」
 レイヴスの顔が絶望に歪んだ。
 なぜアーデンがここまで気を立てているのか。それはレイヴスが勝手に自身も敵と切り合い、怪我を負ったと知ったからだった。
「お前の体はお前のものじゃないって、何度言えば分かるんだよ」
「あぐっ……! あぁぁ! ア”ア”ア”ア”ア”!」
 再びイきそうになってきゅっとつり上がる二つの玉を、大きな手のひらで掴んで引っ張ってやった。絶頂をそらされたまま尚も潤んだ孔を突かれ続け、終わりの見えない快楽にレイヴスが悶える。少したるみを残し余裕のある袋を揉みこみ、双球を手のひらで転がす。ぷりんとした睾丸を繰り出すように圧をかけてやれば、レイヴスが息を呑んだのが分かった。
「やめろ、アーデン、やめ……っ」
「なんで? あぁ、潰されそうで怖いのか」
「嫌だ! いや、アーデン!」
「いいじゃない、どうせもう子供なんか作れないでしょ? 男に掘られて啼いちゃう体で、どうやって女の人抱くつもり?」
「あ……、あっ……!」
 口では脅しながらも、手では優しくそれを愛でる。やわやわと揉み込みながら腰を回すと、レイヴスが鼻にかかった吐息を漏らした。
「ずいぶん甘えた声出せるじゃない。そうだ、今度君の部下たちの前で犯してやろうか? あれだけ取り澄まして高圧的な君がこんな恥ずかしいことされてるんだって知ったら、カリゴ君やロキ君はどう思うんだろうねぇ?」
「貴様……ッ、言わせておけば勝手なことを……! あッ! ぁぁん」
「ははは! 口ほどにもないね! なにその声! 悦がっちゃってさぁ! そんな声女の人でもなかなか出せないよ! いやぁ、テネブラエの王子様は淫乱だねぇ」
 怒りに燃える瞳で睨みつけてくるものの、腰を深く入れてやればすぐに表情が泣きそうに歪む。
「気持ち良い?」
「誰が……ッ!」
「気持ち良いんだよねぇ? 俺なんかに犯されて気持ち良くて堪らないのが悔しいんだよねぇ? そんな自分を死ぬ程嫌悪してるんだよねぇ!」
 分かるよ。そういって微笑みながら腰を振る。レイヴスはもう何も言わず、小さな喘ぎを漏らすばかりだ。
「いいじゃない、認めなよ。自分が如何に無力で愚かな存在か、認めちゃえば楽になるよ? 大丈夫、俺はそんな君を嫌いになんかならないからさぁ」
 ずっと傍にいてあげるから、早くここまで堕ちておいでよ。
 レイヴスにはもうアーデンの声は届かない。居たたまれなくて苦しくて全てを遮断してしまったのだろう、ただ甘く喘ぐばかりだ。
「あれ、もう落ちちゃったの? しょうがないなぁ」
 アーデンは、それまで局部以外乱していなかった衣服を全て脱ぎ捨てる。そして一糸纏わぬ姿になると、一切の抵抗を止めて従順に快楽に身をゆだねだしたレイヴスを優しく抱き締めた。レイヴスはアーデンの顔をじっと見つめてくる。
「なに、キス? いいよ、口開けて」
 そっと開いたレイヴスの唇を舐めてから塞ぎ、舌をねじ込んでやると、くふっと甘ったれた吐息が耳もとを擽った。くちゅ、くちゃと濡れた音を響かせながら互いの舌が絡み合う。こうして素肌同士を合わせていると、そこから溶け合って境目が分からなくなるような錯覚を覚える。レイヴスの両腕がアーデンの首筋に縋ってくる。義手の爪が当たって少し痛かった。
「アーデン、もっと……」
「キス?」
「んん」
 違う、と首を振る。もっと腰を振って欲しいらしく、自分で腰をうねらせて気持ちの良いところをアーデンのものに擦りつけている。
「あん……あ、あぁぁぁ」
 小刻みに揺すぶってやれば甘い喘ぎを漏らしながら体を震わせる。レイヴスの腹の上で踊る彼自身の性器は、桃色の先端から粘った雫を零して快楽を訴えている。
「ク、う…、ン……、あ……っ」
 再び極めそうになっているレイヴス。アーデンの手で大きく開かされている脚が心なしか震えている。時折きゅっと力がこもる様子から、つま先まで丸めて我慢しているのだろう。
「こらこら、まだ俺一回もイってないよ」
「やめ…あ、も、無理だ……」
 あと少し擦ってもらえたら極まる、というタイミングでアーデンが不意に強直を引き抜いた。
「ーーっ!? おい…ッ! なんで…!」
「きみばっかり気持ちよくなっててずるいなあと思ってさ。…俺のことも悦くしてよ」
 広い寝台の上にアーデンは仰向けに寝る。そして起き上がったレイヴスに自らの猛った性器を指させば、何を求められているのか理解したようで、しぶしぶと言った様子でアーデンの腰に股がってくる。
「良い子だねぇ」
 腰を撫で上げると舌打ちが返ってきた。
「なに、要らないの?」
「……」
「俺は別にいいけど、レイヴスくんそれどうするの?」
 視線の先にあるものは腹につく程に反り返り、先端からは白濁を滲ませている。イきたくてイきたくて仕方ないだろうその状態でお預けにされるのはあまりに酷だろう。アーデンとて同じような状況なのだが、この身は欲望などいくらでもコントロールできる。それに対してレイヴスは生身の体である上まだ若く健全な男子だ。寸止めなどそうそう我慢できるものではない。
 アーデンの腰を跨いだ状態で一向に腰を下ろそうとしないレイヴスを揺さぶるために起き上がる素振りをみせると、焦った様子で胸元を押し返された。
「待て……、する、から……」
 そうそう、それで良いんだよ。にんまりと唇を吊り上げる。レイヴスは唇を噛んでアーデンを恨めしそうに睨んでから、そっとアーデンのものを支えてその上に腰を下ろした。
「ひぁ……、んっ……?」
 しかし、レイヴスは上手くそれを咥えられなかった。
「は…、っク……」
 右手を自分の背に回し、アーデンの勃起を後ろ手に掴んだ状態で挿入しようとしているのだが位置が定まらないらしく、ずにゅん、むにゅん、と亀頭がレイヴスの良く締まった臀部に擦れるばかり。時折蕾に先端が触れるものの、驚いて蕾がきゅうっと窄まり上手く挿入らないらしい。
「なにそれ、新しいプレイ?」
「努力はしている!」
 顔を赤くして怒るレイヴス。相当に焦れているらしく段々と腰の動きが大胆になっていく。
「しょうがないなぁ。手伝ってあげるよ」
「っおい! ―――~~~ッ!」
 蕾に指を二本突っ込んではさみのように開き、蕾が不意打ちにわなないてて抵抗できないでいる隙に、腰を突き上げて一気に突き刺した。
「あ! ァ! っヒぁ!」
 突然の衝撃に足を崩してしまったレイヴスは一息に自重で最奥まで貫かれ背を反らして悶えている。腹がひくひくと波打って苦しそうに、それでいて健気にアーデンの雄蕊を咥え込んでいる。
「はい、これで動いて」
 散々に焦らされていた粘膜に突然楔を打ち込まれ、中はまだ馴染みきっていない。そこを無理に促され、腰を細かく揺すぶられたレイヴスは、息も絶え絶えにアーデンの胸元に両手で縋ると、少しずつ腰を上下し始めた。
「は……ッ、ぅん……!」
 ぬち、くちっ、という濡れた音と互いの息遣いが部屋に響く。
「ふふ、きみ、自分が今どれだけはしたない事してるのか分かってる? 自分で男に跨がってちんこ咥え込んで、すんごいいやらしい動きしてさぁ。自分のお腹のとこ見てみなよ」
 この言葉はレイヴスを辱めるためのものだ、もし従おうものならますます相手の思う壺だ。分かっているというのに、怖いもの見たさに似た感情でレイヴスはそろそろと視線を落とし、すぐに後悔した。
 男の腹の上に自ら跨り、まるで見せるように大きく股を開いて腰をくねらせる自分。より気持ち良く粘膜を擦ってもらおうと、腰をねっとりと上下させたり、時折腰を回してみたり、細かく揺すってみたり。その動きで中心で勃ちあがっている自身は先端から粘ったいやらしい液を漏らしながらぶるんぶるん振り回されている。「おしりの穴もいやらしいよ? 俺を咥えて、真っ赤に熟れてる粘膜がめくれ上がってる」
 全てアーデンに見られている。
「誰の……せ……、っや……ッ」
 最後まで言う前にアーデンが大きく腰を突き上げたため、レイヴスは遂に自分で姿勢を保てなくなった。男の胸の上に上体が崩れ落ち、そのまま圧し掛かるような体勢になった。そのせいで、少しだけ結合が浅くなった。。
「こらこら、全体重かけられたら重いでしょうが」
「ぁ、も、無理ぃ……、んぐ……」
「何、もう限界なの?」
「あ、イく、イぐ”ぅ……ッ~~~!」
 我慢しようと歯を食いしばったようだが間に合わなかったらしい。足の指をぎゅうっと丸めて背中をびくんびくん!と大きく痙攣させ、レイヴスは再び欲望をぶちまけた。
 吐き出され白濁は勢いがあって、アーデンの腹から胸毛のあたりにまで飛び散った。辺りに青臭い匂いが広がる。
「…まーた先にイっちゃって。堪え性が無さすぎない? 躾が必要かなぁ?」
「……ァ、ぅ……っ! あ”あ”あ”あぁぁぁ!」
 絶頂の余韻にうねってきゅうきゅうと締まる内部を、休む間も与えず容赦なく抉る。そして忙しなく腰を振ってアーデンも自らの絶頂を目指す。
「ぎぁッ……! も、やめ……、勘弁、しろ……ッ!」
「自分だけ、イって……っ、勘弁、しろぉ? はぁ……っ、我儘も大概に、しなさい、よっ」
「あ…っ、ぁうッ、ん、あ、ア! ア! アァァ……!」
 ゆっさゆっさと揺さぶって責めるも、この体勢では動きが制限されてなかなかイけそうにない。
「ちょっと起きて、うつ伏せになって」
 体位を変えたいのだが、レイヴスは体に力が入らないようでアーデンに縋ったままだ。仕方ないので、繋がったまま力業でレイヴスごと強引に体を起こし、腰と背を抱えて押し倒した。正常位に持ち込んだのでこれでようやく好きに動ける。
「あ~あ、きみに動いてイかせてもらおうと思ってたのに。今日は許してあげるけど、その代わり別の事してもらうからね」
「ん、ぁ……、あ……」
 レイヴスの脚を大きく開かせ、浅くなっていた結合を再び深くする。そして動きやすいようにその腰の下に枕を入れ、逞しい太腿を両手でしっかり押さえつけて赤ん坊がおしめを替えられる時のような体勢にした。
「いい眺めだよ。恥ずかしいねぇ」
 アーデンは、自らの赤黒い肉棒が可憐な蕾にずっぽりと嵌っているのを目の当たりにして一気に興奮が高まった。
「今度は俺の番だからね、覚悟しなさいよ」
 喋りもせず、焦らしもせず、レイヴスが啜り泣きながら許しを請うのも聞き入れず、アーデンはただひたすらに腰を振って自らの欲望を解き放った。
「ふ……、ん…、く、」
 熱くとろける肉の筒の中に思い切り射精して、最後の一滴まで注ぎ込むように最後は数回ゆったりと腰を振りレイヴスの中から性器を引き抜く。太く長いもので散々嬲られた蕾はすぐには閉じることができずに、小さく口を開けたまま中の媚肉を覗かせている。抜き出したペニスと蕾の間につうっと粘った糸が引き、続いて先程注いだ白濁とジェルが混じったものが少し漏れて、レイヴスの太腿を伝う。それは生々しい行為を物語っており、一度は鎮まったアーデンの欲望に再び火を着けるには充分だった。
「ひ……ッ、おい、もう止めろ……ッ!」
「えぇぇ? きみは何度もイったのにずるくない? 俺だってもっと悦くなりたいもん」
「もうよせ! どけ……っ、―――~~~~ッ!」
 レイヴスの抗議を他所に再び兆した怒張を咥え込ませる。ぐちゃぐちゃに濡れて解けた内部は侵入者を拒む事などできず、先端を押し当ててちょっと体重をかければ簡単に先端がめり込んだ。そのまま、ぬぷん、と音を立てて亀頭が吸い込まれてしまえば、あとはずぶずぶと根本まで押し入るのは容易かった。アーデンの陰毛がレイヴスのアナルに触れる。その感触を味わわせてやろうと腰をゆすって一杯に開かされた蕾になすりつけるようにしてやれば、レイヴスが真っ赤な顔をして睨みつけてきた。
「後ろ、俺の毛で擦れて気持ち良い?」
「誰、が……! ン、あ、はぁッ……」
 可愛くない事を言うので突き上げてやったら良い所を押し込まれたらしく大人しくなった。
「嫌だ嫌だ言うわりに、突っ込まれちゃえば喘ぐしかできないんだもんねぇ」
「貴様……ッ」
「反論できるの? ここ、また勃ってきてるよ?」
 中途半端に兆したものを人差し指で弾いてやると、先端を充血させて膨れかけているペニスがぷるんっと揺れる。その様が面白くて二度、三度と弾けば、その度にレイヴスはびくびくと腰を震わせる。
「ここも可愛いもんだ」
 そのまま指で袋の裏側の縫い目をつうっと辿った。
「きみ、ほんとはどっちが気持ち良いの? おちんちん? それともやっぱりお尻の穴?」
「……っ」
「答えなよ、どっち」
 レイヴスはぷいっと横を向き、そのまま答えない。
「あ、そ。まぁ良いや。聞かなくても分かるし。前触ってやらなくても突っ込んでやればイけるんだから、お尻の穴の方が好きなんだよね?」
「……そういう訳ではない」
「ふうん?」
 また強がっちゃって。本当に意地っ張りだ。
「じゃあ、お尻の方が悦くなるようにもっと躾なくちゃね。……ケツに力入れて穴締めな?」
「なに……、や、やめッ……、く、あ! あぅ!」
 ずん! と勢いをつけて腹の奥の奥まで突きこんでやり、腹側にあるしこりを亀頭で揉みくちゃにする。レイヴスは意味をなさない声を上げ、喉を反らして吐息を漏らす。これだけ前立腺を苛めているのだからそろそろまたイくだろう。そう思って性器を見やると、意外にもそこは未だ中途半端な硬度を保ったままだった。
「どうしたの、イけない?」
「や……あ、ぅ……」
「じゃあこれは?」
 抱えている太腿を更に押し上げ、膝が腹につくかというくらいに体を折りたたんで腰を捻じ込む。
「うあ! ア”! ア”ア”ア”ぁぁぁぁ!」
 亀頭が狭い場所にごぷんと嵌り込む。最奥と言える場所にある狭く窄まったそこを突いてやれば、レイヴスはもう限界とばかりに涙を流しながら身を捩って逃げようとしている。だが手を緩めるつもりもなく、小刻みに揺すって結腸責めを続ける。狭く敏感な場所に張り出した亀頭を捻じ込まれ、それを揺すられる。アーデンはそんな経験をした事は無いが、受け身の側はそれをされると前後不覚に陥る程の快楽に苛まれるらしい。だからか、レイヴスはこれをとても嫌がる。しかしアーデンからすれば、レイヴスが快楽に泣き喘いで嫌がるだなんて興奮しかしない。だから好んでこの責め方をする。
「ぃあぁぁぁ! も、やめ、て…! やめてくれっ!…や! いやだ……!」
 ぐちゅん、ごぽん、と濡れた音を立ててアーデンの怒張が出入りする。
「も、出ない! もう出ないいぃい!」
「出さないでもイけるでしょ?」
「無、理だ……ッ」
「あ、俺もう出そう」
 上の口は嫌だ嫌だと繰り返すが下の口は素直で、ちょうだい、ちょうだいとアーデンの性器を締め付けてざわめき、射精を促してくる。
「う、ク……ッ!」
 息を詰めて数回にわたり、アーデンは再びレイヴスの中に精を注ぎ込んだ。
「あ……あぅ……ふ……」
 ナカに熱い飛沫を浴びせられ、レイヴスはぐったりと脱力したまま力なく喘いでいる。
 ずるりと中からそれを抜き出した。
「……ふぅ、スッキリした」
 額から落ちる汗を腕で雑に拭ってレイヴスを見やる。彼は焦点の合わない瞳で明後日の方向をぼんやり見ている。レイヴスのものはやはり完全には勃ち上がらず、先端からただ先走りを零しているだけだ。かと言って空イきしたわけでもないだろう、いつもレイヴスが出さずに極める時には仕草や喘ぎ、体の反応で分かる。
「今日はもうちょっと頑張ってもらおうかな」
 アーデンは一度ベッドから降りると、濡れて汚れた局部をティッシュでざっと拭い、バスローブを羽織って寝室を出る。そして戻って来た時には、ワインのボトルとグラスを一つ手にしていた。
 レイヴスは快楽の余韻に浸ったままで、アーデンが何をしようとしているのか理解していない。ベッドの横に椅子を引きずってきて座り、サイドテーブルにボトルを置いてワインを飲み始めても何も反応しない。
「ちょっと飛ばしすぎちゃったかな?」
 一口ワインを含み口づけると、レイヴスは大人しく唇を開き、流し込まれる温くなった酒をコクリと嚥下した。
「ね、いいものあげるから、ちょっとそこで俺の酒の肴になってよ」
 サイドテーブルには小さな引き出しがついている。そこを開けると、ゴムや先程使ったラブジェルのボトルと並んで、ベッドで使う道具がいくつか入っている。そのうちの一つを取って引き出しを閉め、アーデンは眼下で横たわる体に視線をやった。
 レイヴスは快楽に浸されきってもう何も分かっていない。これならば押さえつける必要も縛り上げる必要もないだろう。取り出した道具を頬に押し当てても、案の定気怠げな視線を寄越すだけだった。
「舐めて」
 レイヴスの唇に押し当てたそれは、黒く、太さも長さも上級者向けのアナルバイブだ。卑猥な道具が薄い唇を割る。彼は無抵抗でそれに舌を這わせると、先端を咥え込んで口淫を施し始めた。
 ちゅぶ、ぬちゅ、と卑猥な音を立てて一生懸命舐めしゃぶっている。唇をすぼめて亀頭の部分を締め上げたり、幹をゆっくりと舐め上げたり、その様は男根をしゃぶる様そのもので、全てアーデンが根気強く仕込んだ芸当だ。逞しい体躯の青年が、将軍が、神凪の兄が。アーデンにされるがままに痴態を晒す。あられもない痴態を眺める興奮に思わず喉がごくりと鳴った。
 バイブで舌や咥内の性感帯を刺激してやればレイヴスは瞳を潤ませた。そろそろ良いだろう。アーデンはそれを引き抜いて、今度は下の口に当てがった。びくりと一瞬怯えたように体を硬直させた後、諦めたように体の力を抜いた。アーデンはゆっくりとそれを蕾の中へと押し込んでいった。
「あ……」
 小さな喘ぎを漏らしたレイヴスを宥めるようにアーデンが体をさする。
「怖くないから安心しな? 俺の前でドライでイってよ」
 玩具の根本についているスイッチのレバーをぐいっと押し上げた。


 バイブを挿入して暫くはレイヴスも大人しかったが、そのうち焦れったくなったようで、自らの右手で自身を慰めようとした。それではドライオーガズムには達せないので、アーデンは慌てて義手の左手を合わせて後ろ手に縛った。
「あぐ……、も、抜、け……ッ、うぅっ……」
 後孔を嬲っている玩具は、彼の弱みであるしこりと精嚢にしっかり食い込む位置に挿入されている。レイヴスは苦しそうに眉根を寄せ、時折息を詰めて歯を食いしばり、身の内を蝕む性感に耐えている。
 もうイけない、出ないとすすり泣き、喘ぐレイヴスを眺めながら、アーデンはベッド横に置いた椅子の上、ゆったりと腰かけ脚を組みながらワイングラスを傾けた。あの黒い玩具は今レイヴスの真っ赤に熟れた媚肉に包まれ、一定の強さで震え続けている。
「ほら頑張って。もうちょっとだよ」
 グラスを置き、涙と唾液で汚れてしまった顔をぬぐってやりながらアーデンが励ます。レイヴスは後ろ手に腕を拘束されているため玩具の動きに抵抗する術も無く、ふぐ、とか、あぐ、とか耐えるような吐息を漏らしながら腰をくねらせている。
「…ッ、き、さま……、いい加減に……ッ!」
 うつ伏せにしたのではシーツに性器を擦りつけて射精しようとしかねないため、仰向けにしてある。膝を立て、脚をもがかせて喘ぐせいで、黒々としたバイブの柄が白い臀部の間に撃ち込まれている様子が丸見えだ。
「ソレ、紫と迷ったんだけどさ、黒にして正解だったなぁ。なんかエロいしいやらしいのもだけど……、ちょっと下品だよねぇ?」
「――――ッ」
 真っ赤になった顔で睨みつけられた。だが本人は怖い表情をしたつもりだろうが、快楽に泣き濡れた顔など扇情的なだけだ。機械に嬲られ苦しそうな様をニヤニヤと眺めていると、レイヴスが唇を噛み締めて息を詰めた。
「ぅッ……んく、う……」
「あ、こら!」
 なんとレイヴスは、いきんで、尻の孔に挿入されていたバイブを排泄の要領で体内から吐き出したのだった。ゆっくりと押し出されたそれは、亀頭の部分まで見えたところで、ぽとりとベッドに転がった。
「ク、はぁ……ッ、は……んっ……」
 アーデンは、強い刺激の余韻に息を切らしているレイヴスと、シーツの上で震え続けているそれを交互に見比べるとため息をついた。
「なぁんだよ、せっかくもうちょっとだったのにさぁ」
 もう少しでドライオーガズムの快楽に叩き落してやれるところだったのにがっかりだ。しかし、まさかこうして自分で吐き出すとは思わなかった。それをするには腹に力を入れ後孔を締めなけらばならず、更に刺激が強くなるため力が抜けてしまったり震えたりして上手くいかないと思ったのに。
「あ、れは……嫌だ……」
 力なく答えるレイヴスは、いつもドライオーガズムを嫌がる。
「……知ってるよ。悦すぎておかしくなっちゃうんだよねぇ?」
 レイヴスはアーデンから目を反らすと、起き上がろうとした。しかしアーデンがそれを許す訳もなく、レイヴスに圧し掛かり体重をかけて抵抗を封じると、彼の体をうつ伏せにひっくり返した。
「なにを……、ヒッ……!?」
 引き締まった白い臀部に手を這わせ、割れ目に指を滑らせる。先程までバイブを咥えていたそこはぬるりと濡れていて卑猥だ。突然蕾に触れられたレイヴスは驚いたようで、蕾のふちをひくんと震わせた。
「今夜はどうしてもドライでイって欲しいんだよねぇ」
「やめ…! っひぁ! やめろ……! んぅ~~~!!」
 左手で背中を押さえつけ、太腿には体重をかけながら、身動き取れないレイヴスの後孔に右手の人差し指と中指をぬぷんと挿入した。そしてしこりを見つけだすと、抉るように力を入れて圧迫しながらそこを忙しなく擦る。
「あぐっ! あ! あぁぁ! あぁぁぁぁ!」
 散々刺激され続けて腫れあがったしこりは直腸側にせり出している。それを二本の指で挟みこむようにしてコリコリと揉んでやると、レイヴスが動けぬ体を捩ってのたくった。
「…っも、やめて、くれ! ゆるして、ゆる、アぁぁ!」
「前から出しちゃダメだからね?」
 言い置いて、アーデンは背中を抑えていた方の手を念のためにとレイヴスの腹に潜らせ、ペニスを掴むとその根元をきゅうっと抑えた。
「あぐぅ! やめろ……ッ! ぅぅッ……!」
 中途半端とはいえ兆している男の象徴を抑えられるのは苦しいだろう。圧し掛かっている体が逃れようともがくが、アーデンは構わずに前立腺攻めを再開した。
 のたうつ体を押さえつけながら、呻き、泣き喘ぐ声を無視しながらその責めを続けていると、やがてレイヴスのそこがきゅうきゅうとアーデンの指を締め付けだした。そろそろだろう。
「んうっ……、~~~~~!!!」
 かみ殺した呻き声をあげながら、レイヴスは背中や足をピンと伸ばしてからびくびくと大きく痙攣した。ようやくドライで達せたようだった。試しに、性器を押さえていた指を緩め竿を一擦りして、ぬめりを手に取って見てみるが、透明な粘液がテラテラと光るばかりで白濁は混じっていない。
「やっとできたねぇ?」
 ドライオーガズムの余韻は長く続く。レイヴスは未だ体を震わせながら時折甘い声を上げている。アーデンは見せつけるように手を汚したそれを舐め、レイヴスの頬にも塗り付ける。
 やがてレイヴスが落ち着くと、アーデンは腰が立たないレイヴスの肩を支えてバスルームへと向かった。


 アーデンは、浴槽に湯を張りながら、広い室内の片隅でへたりこんでいるレイヴスを手招きする。
「こっちにおいで。洗ってあげる」
「! 嫌だ! 自分で……」
「できるの? ふうん、良いよ、じゃあやってごらんよ」
 レイヴスが唇を噛むのを、アーデンは面白そうに見ていた。
 アーデンが洗ってやると言ったのは何も体の事だけではない。ローションやアーデンの精液で汚れているレイヴスの直腸を洗ってやると言ったのだ。レイヴスはそれが分かったので断った。
 しかし、自分でそれをやるのはレイヴスには難しいだろう。散々攻め抜かれたその場所に自ら指を挿れ、奥まで広げながら掻き出さななければいけない。
「ほら、早く」
 シャワーのコックを捻れば温かい湯が降り注ぐ。アーデンはそれを見せて促した。
 レイヴスはのろのろと立ち上がると、覚束ない足取りでシャワーのところまで来てからアーデンを見た。
「……見るな」
「無理」
 即座に拒否されたレイヴスは渋々、男の前で自らの蕾に指を当てがった。
「……ッ……」
 ぬぷん、とその場所に白い指が呑み込まれる。アーデンは膝をついて、レイヴスの尻の前に顔を寄せてその様を観察した。
「何をする! この変態が……ッ!」
「はやく洗いなよ。じゃないと俺が洗うよ?」
 コレで、と言いつつ立ち上がりながら、アーデンは高い位置にあるシャワーの持ち手を手にしてレイヴスに見せる。レイヴスははっとした様子でアーデンを見た。それは以前やられてとても苦悩したものだった。命令されて四つ這いにされ、シャワーから勢い良く迸る水流で内部を洗われた。いわゆる「シャワー浣腸」だが、温かい湯に直腸を満たされ苦しかったし、しかもそれを何度も何度も男の見ている前で排泄させられた。あんな思いは御免だと、レイヴスは恐る恐る指を動かし始めた。
 ぬち、くち、と蕾から濡れた音がして、浴室内に響く。
「ん……は、あぐっ……」
「もっとしっかり掻き出さないと綺麗にならないよ」
「…っ、分かって、いる!」
 そんな事を言われても上手くなどできないのだ。散々苛められたそこはぽてりと腫れ、刺激を快楽と認識する。自分で自分の尻の穴を掻き回して気持ちよくなるなど、耐えられない羞恥だった。
 おまけに、レイヴスは自らの性器が刺激に反応して勃起し始めているのに気づいていた。
「あれ……? レイヴスくん、もしかして勃ってる?」
 気付かれてしまった。この距離では隠すのは難しいとは分かっていながらも、男に見られたくはなかった。
「……ただの生理現象だ」
 そっぽを向いてできるだけ事務的に告げようとしたものの、快楽にとろけた声が出てしまう。アーデンが唇を吊り上げたのが見えた。
「へぇ? そっか、じゃあ続けて」
 アーデンに言われた通りに、レイヴスは自分のそこに血が集まるのをなんとか無視しながら後ろを洗う。だが、やっとぬめりがなくなり綺麗になったと思ったところで、我慢の限界に来た。
「ア、アーデ……」
 イきたい。散々出したはずなのに、勃起したそこが解放を強請っている。自分で擦って出すこともできるが、自分で洗った蕾も中途半端な刺激を得たせいで、欲しくて欲しくて堪らなくなっている。
「どうしたの? ……脚が震えてるけど」
「……欲しい」
「欲しいって、何が?」
「……分かるだろッ!」
「分かんないよぉ。……ね、して欲しい事があるんなら、ちゃんとお願いしてよ」
 レイヴスは屈辱に震えながらも、アーデンを強請る言葉を告げた。
「……後ろ、挿れてくれ。……射精、したい……」
 いいよ、笑ったアーデンに促され、レイヴスはアーデンの胡坐の上に自ら座り込んだ。


 レイヴスはアーデンの腰の上に座り、対面座位の体勢で腰を振った。自分で気持ちの良い所に擦り付けるのは気絶する程に悦かった。
 そして、なんとか射精してアーデンの楔を抜き、男から離れようとした時、レイヴスは膝をつかされ、四つ這いに押さえつけられた。
「俺まだだもん、もう一回ね」
 信じられない思いでアーデンを振り返るも、遠慮のない仕草で突きこまれ、腰を振られた。
「や、めろ……、も、無理、ぁ……ッ! も、でな、でない……!」
 ぐりぐりと結腸までこね回される。そして、もう意識を手放しそうだという所で、腹の中に熱いものが迸るのを感じた。


 その後、せっかく苦労して洗ったのに再び直腸に男の精を浴びせられたレイヴスは、もう自分で洗う気力もなく男に身を任せた。
「しょうがないなぁ、手のかかる子だよほんと」
 男の長い指が二本入って来て、擦られすぎて真っ赤に腫れた内部を丁寧に洗われる。最後は嫌だとすすり泣いたが許されず、シャワー浣腸までお見舞いされた。
「あぁ……っ! うぐ……ッ、くるし、アーデ、あ! も、もう無理だ! もう入らないぃぃ!」
「まだお腹一杯じゃないでしょ、もうちょっと」
「うぐぅう……!」
 激しい水流に蕾を刺激されるだけでも耐え難いのに、はさみのように後ろを開かれながらシャワーを当てられると、敏感な粘膜や、弱点であるしこりまでシャワーの水流にもみくちゃにされる。
「ひぁぁぁぁ! あぁぁぁぁ!」
「我慢しろって。ほら!」
 肛門にシャワーヘッドを押し当てられ、勢いの削がれない水流に蕾と直腸を嬲られる。レイヴスは理解した。アーデンは洗うためではなく、こうしてレイヴスを責めているのだと。
「ん……っあ! あ、あぁぁぁ!」
 シャワーを退けられると勢いよく蕾から湯が噴射される。しばらく出た後は勢いをなくし、とろとろと温い湯が太腿を伝う。
「これで最後だよ、頑張って」
 再び指で後ろを開かれ、シャワーの水流を流し込まれる。暴力的な刺激がレイヴスを襲う。ダメだ、快楽が背筋を這い上がって来てもう耐えられない。
「ひ……あ!? あ! あ! も、イぐっ! イぐぅぅ……! あぁぁぁ!」
 レイヴスは勢いよく性器から白濁を噴き上げ、続いて透明な液体を大量に噴き上げ、その場で気絶した。

 

Fin

​20180906

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