君が寒いって言うからさぁ
アデレイ冬の風物詩。
エロは匂わせ程度です。
ツイッターでの素敵なタグありがとうございます。
「なかなか良い感じだよ、君もどう?」
「遠慮する」
「まぁそう言わないで」
「軍の施設に勝手な物を持ち込まれては困る」
「ここは君の部屋だよ、好きな物置いて良いに決まってるじゃない」
レイヴスの見下ろしてくる目つきが一層鋭くなった。
「そうだ、『私の』部屋だ。貴公のではなく」
「あーそんな他人行儀なのやめてよね、いつも通り仲良くしてよぉ」
言いながら、上目遣いで見上げてお願いポーズをしてみたら、明らかに気持ち悪いって顔をされてしまった。ひどいんだから。
「将軍サマのために準備したんだよ」
「頼んだ覚えは無い」
先程からずっとこの調子で、レイヴスは全くもってアーデンの誘いに乗ってくれない。
「わざわざ○トリに行って選んで来たのに」
「だから頼んでいない」
「それともあれかな、無○良品のが良かった?」
やっぱり王子様だから、庶民的な家具では気に入らなかったか、そうするといっそカリ○クの方が良かったのかな、なんて一人でうんうん唸るアーデンに向けられたのは、レイヴスの冷ややかな視線だった。
「そんな話ではないと、貴様も充分理解しているはずだ」
「……ごまかされてはくれないって訳か」
「当然」
きっぱり言い放つなり、スタスタとアーデンの前を過ぎ去って続き部屋へと向かうレイヴス。そちらはアーデンも勝手知ったる寝室だ。
ガチャガチャと金属質な音がしてから扉の閉まる気配、続いて微かな水音が聞こえてきた。装甲を取り外し衣類を脱ぎ、浴室に入ったらしい。レイヴスのスケジュールは全て把握している。今日はもう仕事が終わっている事も、明日がオフである事も。
しばらくぼけっとしているうちに20分くらい経っただろうか、腰にバスタオルを巻いて、髪を拭きながらレイヴスが出てきた。
「わお、セクシー」
口笛を吹いて囃し立てるも無視された。アーデンには目もくれずに簡易キッチンへ向かうと、ミネラルウォーターのボトルを取り出して口をつける。良い飲みっぷりで、こくり、こくりと喉仏が上下する様が扇情的だ。飲み込み切れなかった滴一つ、口元からつうっと首を通って鎖骨へ滑り落ちる。
その様をじっと見ていると、彼と目が合った。見るなと怒り出すかと思ったが、意外な事に反応が無い。
「あの~、そこまで意識されないと、もはや男と見られていないのかと心配になるんだけど」
だが言葉の意図が理解されることは無かった。きょとんとした顔をしたあと、僅かに首を傾げてみせる。
「早く服を着ておいで、風邪引くよ。それにねぇ、……ピンクの乳首とか丸見えだよ」
「! この変態が」
ようやく分かったようで、ふんっと効果音がつきそうな勢いで首を逸らして寝室に戻り、寝間着にしているスウェットを着てから戻ってきた。
「さっきから、思っているんだが…」
『それ』の中に下半身を入れて座っているアーデンにレイヴスが言う。
「その変な箱は一体何なんだ?」
「え?」
随分突っぱねられると思ったが、これを知らなかったらしい。
「東の国の文化らしいんだけどさ、この中は暖かいの。机の下の部分にヒーターが入ってて、そこをこうして布で覆って暖かい空気を閉じ込めてるの」
「ふうん」
「入ってみなよ」
レイヴスは興味を抱いたようで、アーデンの向かい側に腰を下ろすと足を入れてきた。
「床に直に座るのは慣れないかな?」
「ああ。こんなもの、見たことも聞いたこともない」
「コタツって言うんだよ」
「おい、もう少し脚をそっちにやれ、狭い」
「ごめんねぇ脚が長くて」
呆れたような顔をするレイヴスに意趣返しすべく、アーデンは足を伸ばした。
「おい! どこを…ッ!」
ふにふにと柔らかく無防備にぶら下がっているソレを足の指で揉んでやると、慌ててレイヴスが腰を引いた。
「良いでしょ、こんないたずらだって出来ちゃうんだよ」
「とっとと片付けろ」
「嫌だよ。ごめんって。こうやってる分には良いでしょ?」
悪戯は辞めにして、そっとレイヴスの脚に自分のものを絡めてみる。抵抗はされなかった。
「君の故郷よりも、ここは寒いでしょ? だからさ」
アーデンの好意なのだと理解して、レイヴスはもう文句を言わなかった。
「……お前も、寒いのは嫌いか?」
「そうだね。俺の故郷だってこんなに寒くは無いからさ」
「そうか」
どこなんだ、とは聞かないのが、君の好ましい所だよ。
「ごめんねぇ、色々秘密主義でさ」
「そう思うなら言え」
「無理だよ」
「フン。何がごめんだ」
確かにね。
「ところで…、身体はもう温まった?」
「?」
「さっき、シャワー慌てて入って来たんでしょ? だからコタツで温まれたかなと思って」
「お前……! な、なぜそれを……っ」
「ははは、正解かぁ」
カマかけただけなんだけどねぇ。
「卑怯だぞ!」
レイヴスは素っ気ないふりをしながらも、明日がオフでアーデンが来たから、自室に泊まっていくのだろうと『準備』してくれたのだ。けれどそれを悟らせたくないからと、慌ててシャワーを切り上げた。
「さあて、隣、行こうか」
しぶしぶ、といった態度は崩さないものの、大人しくレイヴスはアーデンに従う。
「恥じらう所違わない? 平気で素っ裸で歩くくせに」
「男が上半身晒して何を恥じらう」
「ちょっとは恥じらってよ、可愛くね」
「蹴り出すぞ」
「こわいこわい」
ベッドにレイヴスを押し倒し、上にのし掛かる。吐息と吐息が触れ、唇が触れ、どちらともなく舌を絡める。
寒さなんて忘れてさ、溶け合うくらいに一つになれたら良いのにね。
Fin