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モルボルと英雄と実験

 

 セフィロスは全速力で神羅ビルの中を駆け抜けていた。およそ人間業とは思えないようなその速度は、まるで風が駆け抜けるようだった。すれ違う兵士たちは一瞬ぽかんとした後、英雄が駆け抜けたことに思い至る。なんだなんだ、何があったんだ?という声がそこかしこから聞こえてきた。

 当の本人はもうそれどころではなかった。走るとあまりに速度が出るものだから、ビル内は歩いて移動するようにと命じられていたが、どう考えても守っている場合ではない。だって、今は自らの貞操と人権が関わった一大事なのだから。

 魔の巣窟、宝条研究室、通称宝条ラボ。出入りするのを嫌がるのは何もセフィロスに限ったことではない。気味が悪い、何か変なことをされるのではないか――、ソルジャーはおろか一般兵士たちの間でも、そんな噂がまことしやかに囁かれている。

 そんな魔の巣窟の主、宝条博士はセフィロスがとびきりお気に入りだった。何かと言えばセフィロスを実験に使いたがる。普段はしぶしぶその依頼に答えているのだが、今日提示された実験内容はとんでもないものだった。

 全く何を考えているんだ! 前から頭のおかしいマッドだと分かってはいたが、ここまでだったとはな! とりあえずビルから出ないといけない。提示された内容、モルボルとの性行為実験なんて絶対に嫌だ! 

 ポーン、と軽快な音を立ててエレベーターが二階ホールに止まる。扉が開くのを待つのももどかしく、セフィロスは飛び出した。そして一階エントランスへと続く階段の手すりを乗り越え飛び降りる。

 このままダッシュで外に出ようとした、その時だった。

「セフィロス、観念しろよ、と」

 くそ、先回りされたか。目の前に立ち塞がるのはタークスだった。レノとルード。面倒な奴らが来た。セフィロスは舌打ちをする。

「そこをどけ」

「無理だな」

 一歩、二人が歩を進めた。こちらはその分後退りする。こうなっては仕方がない、殴り飛ばしても後が面倒そうなので別ルートで脱出しようと踵を返した。

 しかし、今度は目の前にラボの面々が追いついてきた。セフィロスは背を向けたまま言う。

「おいタークス、今日は見逃せ」

「そうもいかないんだぞ、と。諦めろや旦那」

「お前ら、おれがどうなっても良いのか」

「犯されても死にはしないさ」

「ほう、内容を知っていてそれか。さすがに鬼畜だな」

「お褒めにあずかり光栄だぞ、と」

 全力疾走してきたせいだろう、はあはあと息を切らしている研究員たちがじりじりとセフィロスを取り囲む半円を縮める。全くどうしてくれようかこいつら。もう殴り飛ばすしかなさそうだな。八刀一閃食らわせるよりマシだろう。

 ずずい、と白衣を着た宝条が進み出る。

「大人しくせんか。心配せずとも悦がり啼かせてやるわ。クァックァックァ!」

「元気なじじいだ、さっさとくたばったらどうだ?」

「お前は最近反抗的でいけないな」

 くい、と宝条が顎をしゃくった、その瞬間。

「ーー!?」

 突然、衝撃を受けた。続いて急速な眠気がセフィロスを襲う。

「宝……条」

「心配するな、ただのスリプル弾だぞ、と」

 ふう、っとレノがピストルから立ちのぼる紫煙を吹く。その場に倒れ込んだセフィロスが崩折れる前に研修者たちが抱え込み、その体を運んで行った。

 

 セフィロスが目を覚ますと、まず最初に真っ白な天井が目に入った。数秒ぼうっとしたが、すぐに何が起こったのかを思い出す。

「おい、離せ! 嫌だぞおれは! 絶対に!」

 きっと外で聞いてる。セフィロスは科学者たちに向けて叫んだ。

 セフィロスは全裸に剥かれ、ガラス張りの実験室の実験台に拘束されていた。ご丁寧に柔らかいタオルケットが敷かれ、腰の下にクッションを押し込まれている。手足を戒める鎖をガチャガチャと揺らすも、まったく抜けられそうになかった。知っている、馬鹿力のソルジャーをも縛る鎖だ。抜けられる訳がないのだ。そこに、やはり外で聞いていたのだろう、目を覚ましたと知った研究員が入って来た。

「おい、やめろ」

「無理だ。諦めなさい」

「なぜこんなことを」

「君の生殖機能と、モルボルの繁殖行動の実験が一度でできるんだ、ぜひ協力してくれ」

「おれの意見は無視か」

「怖いのは最初だけだから大丈夫だ。ちゃんと悦くなるから」

「そういう問題じゃないんだ」

「おしゃべりは終わりだ。力を抜いて」

「ーーッ!」

 M字開脚で拘束されている足の間に研究員が体を割り込ませる。大きな注射器に何か液体を吸い上げて、注ぎ口をセフィロスのアナルに挿入してきた。

「これはね、モルボルのメスが出す潤滑剤だ。君が交わるのはオスのモルボルだからね」

「はうっ……苦し……」

 中身を注入され、直腸内をたっぷりと粘液で満たされる。

「君はどうやら女性との間に子がもうけられないみたいだからね。ならば妊娠できるのか、とか色々実験したいのさ」

「は……っ、悪趣味だ……ッ」

「さて、これで全部だよ」

 ぷちゅりと音を立てて、注ぎ口を抜き取られる。

「力を抜いて、楽にしていなさい。大人しくしていれば死ぬほど気持ちいいだけで済むから」

 後孔からはとろとろと甘い香りを放つ粘液が溢れる。研究員はセフィロスの頬を撫でると、部屋を出て行った。拘束されているセフィロスからは見えないが、ガラス張りの実験室の観察エリアにはたくさんの研究員がいるはずだ。彼もまた観察をしに向かったのだろう。

「被験体Bが入ります」

 先程の研究員は観察エリアに戻ると、パネルを操作した。すると実験室の向こう側のドアが開き、発情して涎を垂らすオスのモルボルが入って行った。

 

「来るな、よせ……」

 セフィロスは拘束されたままで、音だけでモンスターが入って来たことを悟る。程なくしてそのおぞましい姿が目に入った。

「キシャーーーッ」

 モルボルは、メスのフェロモンを撒き散らすセフィロスのことをすぐに交配相手だと認識した。そして、何本もの触手が白い肢体に襲いかかる。

「ひっ……嫌だ!」

 絶叫するも虚しく、たっぷりと粘液を含んでいる後孔に一本、細めの触手がぐぷんと音を立てて入り込んだ。

「ひああああ!」

 中をうねうねとかき回される感触に叫ぶ。触手はその感触を確かめるかのように出入りを繰り返した。

 少し後孔がほぐれて柔らかくなってくると、もう一本入り込む。バラバラに動いて後孔をこねられ、セフィロスは次第に快楽に苛まれ始めた。

「嫌だ……頼む、やめてくれ」

 意味を理解するはずがないと理解はしていても、懇願せずにはいられない。背筋をゾクゾクと甘い刺激が這い上がる。腰をよじっても、触手が抜け出ることはなかった。

「はん……ううんっ……!」

 涙をためた目元を、触手の一本が優しく拭った。セフィロスははっとして自分を組み敷くモルボルを見た。

 モルボルはまるで恋人にするかのような優しい仕草で、セフィロスの目元を、頬を、触手の一本で撫でる。完全に番だと思っているようだった。

「あっ……やッ……?」

 次第に意識が朦朧としてきて、なにやら心地が良くなってきた。目一杯開かされた脚、その間に陣取るようにしてモルボルがセフィロスを組み敷いている。その体からは甘い香りを立ち上らせており、それがセフィロスの理性を奪っていくのだった。

「ああん……はぅぅぅぅ」

 最早、その表情は快楽に濡れ、一切の苦痛も恥辱も感じていなかった。ただただ与えられる快楽を享受することに夢中になる。

「あん! ああああん!」

 ぬちゅ、ぐちゅ、という粘着質な音を立てて、激しく後孔を複数の触手が出入りする。十分な長さを持ったそれらは前立腺を擦り、やがて最奥の結腸へと入り込む。

「ひいいい! いやあああ! ああああ!」

 結腸の更に奥まで入りこんだ触手が中でうねり、セフィロスは泣き喘ぐ。必死で首を振って涙が散った。

「やらあああ! いやッ……そこはいやああ! ひいいいっ!」

 最も感じる場所をごりごりと擦られ、気がおかしくなるのではないかという強烈な快楽に苛まれる。

「そろそろ拘束を外してやれ」

 ガラスの向こう側でじっと見ていた宝条が、研究者の一人に指示する。パネルを操作すると、程なくして実験台へと白い肢体を戒めていた拘束具が外れた。

「んくぅ……、ああん……」

 セフィロスは、自由になった脚をモルボルの体に絡める。新たに一本太い触手が伸びてきて、優しく太ももに絡みついた。

「ひ……あっ……ダメだ……っ」

 見やれば、半透明な大きな筒のような形をした触手が伸びてきて、すっぽりと性器を包まれる。そのまま揉みしだくように刺激され、新たな快楽に悶える。

「や……はうん……」

 上気した頬、とろけた瞳、はくはくと甘い息を漏らす紅い唇。モンスターに犯されて尚、セフィロスは美しかった。

 くちゅ、くちゅ、と性器とその根本の袋を粘液を絡めながら揉みしだかれる。にゅるにゅるとした感触に思わず放ちそうになった時だった。

「!?」

 透明で性器を咥えている触手の中から、もう一本ごく細い触手が伸びてきて、あっという間に性器の隘路へと入りこんだのだ。

「ひああああ!?」

 信じられない刺激と逆流する感触に、仰け反り、目を見開いて叫ぶ。細い管は奥へ奥へと進み、やがて腹の辺りで止まる。

「……!」

 その瞬間、セフィロスは思いがけず絶頂した。前立腺を内側から刺激され、ドライで達したのだ。

「は……うっ……!」

 ビクビクと体が痙攣し、目の前が真っ白にスパークする。達している間も後孔と尿道を刺激し続けられ、絶頂感が去らない。

「かはっ……あっ」

 そのうち、後孔の細い複数の触手が体内から出て行く。ずるりと抜け出て杭を失った蕾が物欲しそうにひくひくと震えた。

 ようやく絶頂の波から抜け出せた体を複数の触手で優しく撫で回し、モルボルは一層太い触手を伸ばした。

 それは、モルボルの性器だった。凶悪なほどに太く、先端の方はイボイボになっている。また、形を変えることができるらしく、色々な場所でぼこりと膨らんだり、へこんだりを繰り返す。

「ひっ……嫌だ! 無理だ! それは無理!」

 快楽に蕩けながらもセフィロスが怯える。後孔からはとろとろと事前に注ぎ込まれていた蜜が零れ出てきている。

「あっ、いや、や! ああああッ!」

 ずり上がって逃れようとする体を太ももに絡んだ触手が拘束し、凶悪な先端を蕾に押し当てる。そこは期待にひくひくと収縮し、口をいっぱいに開いで健気にも飲み込もうと蠢く。

「ひああああ!」

 ついに、モルボルの性器が後孔に挿入される。しかし、蕾がとろとろなのと、性器がぬるぬると滑っているせいで信じられないくらいスムーズに体内へと入っていった。

「はう……んっ」

 苦しみを減らそうと、モルボルが感じる部分をゆっくり擦っていくのだろう、犯される体は再び緩み、表情も快楽にとろけだす。

「んああ……」

 ぐうっと奥まで押し入り、やがて触手の侵入が止まった。セフィロスは腸を一杯に満たされ、充溢感と少しの苦しさに悶える。

「はっ……」

 やがて馴染んだ頃、ゆっくりと太い触手が出し入れされ始めた。

「ああっ……っや! やあっ! やめてぇ!」

 長大なものに腸内を擦り上げられる刺激とともに、結腸をイボイボで捏ねられる。

「ひああああ! むりぃぃぃ! あああああ!」

 拘束された脚をバタつかせ、体をよじって泣き叫ぶ。ごりごりと結腸を暫く捏ねられるうち、再びドライオーガズムがやってきた。

 セフィロスが「オス」だと分かっている訳ではないだろうに、モルボルはセフィロスが背中をしならせるのに合わせて性器に挿入した管で精液を吸い上げてやろうとする。しかし漏れ出るのはカウパーばかりで、なかなか蜜を飛ばせない。

「あん……ひああ……」

 絶頂の余韻に震える後孔がひくひくとモルボルの性器をしゃぶる。モルボルは前立腺の辺りを膨らませたモノで、こりこりと腫れたしこりを擦ってやった。しかし、後孔の刺激が強すぎるのか、やはり射精に至らない。

「はん……あう……」

 快楽に蕩ける表情ときゅうきゅうと締まる直腸の様子からモルボルは相手が十分感じているのを悟ったのか、再び性器を出し入れする。

 そして、しばらくするとその根本が後孔に栓をするかのように膨れ上がった。

「あっ……? なに……? ……あ!」

 ピタリと動きが止まった次の瞬間、大量の液体が直腸に注入される。

「ひあああああ!」

 それはモルボルの精液だった。ついに、セフィロスはモンスターに種付けされたのだった。

「あ……っ、あ……」

 びゅうびゅうと勢い良く注入される液体、続いて何か固形のものが入ってくる。

「ひあ! やだ! やめろ……っ!」

 ぽこぽことたくさんの個体を腹に注入され、とたんに苦しくなる。やがて、全てのものを吐き出すと太い性器は抜け出ていった。

「ん……っふ……」

 モルボルはその大きく裂けた口から舌を出し、ぽこりと膨らんだ腹を愛おしそうに舐める。ポコポコと張った腹をねっとりと舐められるうち、やがて強烈な排泄感に苛まれだす。

「嫌だっ……、もう……あっ! あああ!」

 次の瞬間、セフィロスは体内から注入されていた固形物と白く濁った粘液を吐き出した。ぴゅく、ぴゅく、と断続的に吹き上がる液体、ぽこぽこと溢れる固形物。

「博士、あれは一体……」

「あれは卵か? 興味深い! どういうことだ?」

 科学者たちは目の前で繰り広げられる光景に興味を抱いた。この後、セフィロスに注がれた液体と卵と思しき固形物を回収することにする。

「は……、あ……」

 セフィロスは固形物を吐き出した刺激でようやく射精をした。既にモルボルの触手が外れていた性器から白い蜜を飛ばして腹を汚す。その蜜は、モルボルが優しく舐めとった。

 

 カチャカチャという音で、セフィロスは目を覚ました。

「気がついたかね」

「あ……」

「よく頑張ってくれた、おかげで興味深い実験になったよ」

「……」

「この後君の測定があるから、そのままでいてくれ」

 周りでは後片付けをする者と、新たな準備をする研究者が忙しなく動き回っている。セフィロスはぐったりとして動けなかった。そしてもう今更だと、そっと瞼を閉じた。

​Fin

20160426

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